Scene.39 本屋は、飽きない!
高円寺文庫センター物語㊴
2003年の箱根駅伝は、観ることができなかった。前年は総合3位に終わった早稲田大学が気になっていたのに、風邪の寝正月になってしまったからである。
やはり突っ走ってきた2002年。晦日大晦日と出勤して、さすがの50代。体力の限界だったかな。
お正月の楽しみ、箱根駅伝も見過ごすようじゃ03年はどんなことが待ち構えていることやら・・・・
初っ端は、文庫センター元スタッフの結婚式ときた。
バイトくんは時間給なので、与えられた仕事を効率よくクリアしてくれないとならない。
瞬間的な沈思黙考から、素早い行動力でバイト力の素晴らしさを見せてくれた元バイトくんの結婚式には喜んで駆けつけた。
そういえば、その子がいた時代に実現できなかったプランに「バイトくんのなんにもしないデー」というのがあった。
ブックフェアやイベント企画に店内インテリアなど、日常業務から解き放ってアイデアを閃いてもらおうと考えた。他の本屋を見てまわっても、イメージに規制がかかるだけなので、雑貨屋やCD・レコードショップなどでアンテナを研ぎ澄ましてきてもらうプランだった。
書泉勤務時代の争議以前に、研修としてアメリカの書店やデパートと、ショッピングセンターなどを見学に派遣された。
1974年のことだが、さすがに資本主義の総本山は商業施設が刺激的だった。本屋はBGMも流さず重厚な図書館のようであったり、倉庫を改装しただけのようで蔵書数に徹底したりと見慣れた神保町の書店風景とは大きく趣きが違っていた。
バーゲンブックは既に芸術的なタワーの萌芽を見せていたし、椅子が随所に置かれている書店を多く見た。当時で知りうる限りは、神保町の東京堂書店が階段の踊り場に椅子を置いていた程度だったと思う。
アメリカの書店見学で刺激を受けて、帰国後は世界の出版・書店業界事情を読み漁った。結果としては、いずれアメリカの影響を受けるのだろうなということ。
再販売価格維持制度。略して再販制といって、その国内では一点の本が同一価格で買える制度を廃止したり、また復活させたりしたフランスは本の業界も国も真剣に文化を考えていた証左だと思う。アンドレ・マルローが、文化相を務めるお国柄だけのことはある。
後々のことになるが、ニューヨークの片隅に文庫センターのような本屋があったことを知った。やはり小さな本屋でしかないが、作家やアーティストなどに愛され、常連だった詩人のアレン・ギンズバーグはポエトリーリーディングを何度もしていたそうな。
本屋がやるイベントで、すべてが稼ぎになるわけでもない。だったら、種を撒こうよ!
(あのさ、本屋の後輩諸氏に!
各々の地元で、間歇的にであれ文化を紡ぐイベントをしなさいよ。できるでしょ、貴方がやらなくて誰がやるの!)
「さすがの店長が、話に絡めんと」
「どぎゃんもならん。こうサイン会の主役が寡黙じゃ、取りつく島がないわ」
サイン会を重ねても、ゲストの個性で慣れはない・・・・
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